マトリックス

「マトリックス」は従来のインターネットに代わる世界規模の通信ネットワークです。
シムセンス(=シミュレーションセンス)という仮想現実(VR)技術がもたらした「もう一つの世界」とも呼べる空間が広がっています。
(もちろん、端末の画面を通じて現実世界からのアクセスも可能です)
映像放送、通話、その他あらゆる通信はマトリックスを介して行われており、第六世界で行われる全ての社会活動を支えています。

マトリックスの構造

視覚化された仮想現実(VR)空間にある「ホスト」と呼ばれるサーバー群と、利用者のアバターである「ペルソナ」、そして様々な電子機器の「アイコン」で構成されています。
大量のホスト群が寄り集まった銀河で、電子機器のアイコンやその他のデータが無限の流れ星のように飛び交っています。

ホスト

従来のサーバーの進化系で、物理的には存在しない完全な仮想機です。「マトリックスという世界にある建造物」と捉えれば分かりやすいでしょう。
建物の中が見えないように、ホストに接続された電子機器は外部からは電子的に認識、アクセスできなくなります。
多くの企業、個人がホストを構築して不正アクセスを防止するとともに、正規の訪問者をもてなすために様々なテクスチャで独自の内部空間を作り上げています。

グリッド

マトリックスの接続プロバイダーとそれらが管理するネットワーク領域のことです。キャラクターがどのグリッドで接続しているかは現在いる地域やライフスタイルによって変わります。
無償で低速の公共グリッドの他に、各ビッグ10メガコーポが提供するグローバルグリッド、国家や都市(に委託された企業)の運営するローカル・グリッドなどがあります。
異なるグリッド間でも交信は可能ですが、あなたがハッカーである場合は階層の違いによるほんの僅かなノイズ(判定ペナルティ)が問題となるかもしれません。

仮想現実(VR)技術

2018年、シカゴのESPシステムズ社が「人工感覚誘起システム(ASIST)」を開発。
その名の通り脳内で直接任意の感覚を発生させるこの技術は、今日のVR技術の根幹をなすシムセンスの誕生に繋がりました。
2037年にはフチ工業電子が感情の再現も可能な次世代のシムセンスを完成させ、五感に加えて喜怒哀楽さえも人工的に生み出せるようになりました。

ネットワークの変遷

第六世界のネットワークはこれまでに二度「クラッシュ」と呼ばれる崩壊に見舞われ、その都度新たなシステムを構築してきました。

クラッシュ1.0

2029年に起きた最初のクラッシュで、従来のインターネットが終りを迎えた事件です。
未知のコンピュータウィルスが世界中に拡散し、あらゆるネットワークおよびハードウェアが致命的なダメージを受けました。
経済を大混乱に陥れ、社会情勢にも大きな変化をもたらしたこの事件後、最初のマトリックスシステムが構築されます。

クラッシュ2.0

2064年に起きた二度目のクラッシュです。
当時のビッグ10メガコーポノヴァテック」の新規公開株により通信量の増加したマトリックスに危険なAIが流入。
これを危険視した反AI主義者がEMP攻撃を実行し、マトリックス・ネットワークは再び崩壊を迎えました
1.0に匹敵する社会混乱に加えて、マトリックスにダイブしていた多くの人々が"未帰還"となり、断片化したAIを取り込んだ特殊人類「テクノマンサー」が誕生しました。
クラッシュ2.0以降は、ネオネットなどが中心となってワイヤレス型の現行のマトリックスを作り出しました。

コミュニティ

シャドウコミュニティ

シャドウランナー向けのコミュニティはマトリックス上にも存在します。
最も有名なのは「シャドウランド」とその後継たる「ジャックポイント」ですが、ローカルなコミュニティの数は数え切れません。
これらのコミュニティで交わされた議論、意見は「シャドウトーク」と呼ばれ、ルールブックやサプリに掲載されている口語形式の記述はその引用(という設定)です。
シャドウランド
クラッシュ2.0以前にデンバー・ネクサスが運営していたBBS形式のコミュニティです。
コンテンツ主導型で、いわゆる「スレ違い」な議論、宣伝を行うとオープンフォーラムのシャドウセルに「収容」されました。
クラッシュ2.0によって消滅しましたが、一部は未だ機能していると噂されています。
ジャックポイント
シャドウランドの後継として、伝説のデッカー「ファストジャック」が開設したプライベートネットワークです。
暗号化P2P方式で特定のデータヘイブンには属さず、ファストジャックによって選りすぐられた60人ほどの正会員と、専門知識を持つゲストメンバーによって投稿が行われています。
コミュニティとしての機能のほか、評価システム、ニュースフィード、電子メールやファイルストレージを有しています。
シャドウシー
シャドウシー、別名ダークエメラルドはシアトルのランナーのためのコミュニティ兼データヘイブンです。
ジャックポイントと同じくシャドウランドの後継として開設されましたが、サーバー方式を時代遅れと判断したファストジャックが開発から離脱。
以降は彼のライバルであるファセットが代表者を務めています。

データヘイブン

あらゆる「情報」のバックアップが集積された非合法アーカイブです。物理的にもマトリックス上でも高度なセキュリティで保護され、遠隔地にもバックアップを分散させています。
シャドウコミュニティと同一視されがち(実際、コミュニティの多くはデータヘイブンに併設されています)ですが、こちらはデータのバックアップを主目的としています。
デンバー・ネクサス
世界最大のデータヘイブンで、世界で最も強力なサーバー設備、およびマトリックスホストを保有していると言われています。
コロラドスプリングスにある空軍士官学校跡地に設置されており、各地のシャドウコミュニティへのポータル、各データヘイブンのミラーサーバーとして機能しています。
デンバーゴーストウォーカーの手に落ちた後は、アクセス特権と引き換えに活動の保証を得ました。
ヘリックス
ネクサスに次ぐ規模を誇るヨーロッパ最大のデータヘイブンです。オランダのハーグにサーバー施設が存在します。
シャドウコミュニティが併設されており、ヨーロッパで活動するシャドウランナーの一大拠点です。

マトリックス・ルール

ここからはゲームルール的な観点からマトリックスを解説していきます。

マトリックスへの接続

AR(拡張現実)モード

映像リンクなどに備わっているAR機能を利用し、現実空間からマトリックスにアクセスします。処理速度(=イニシアティブ)は身体能力に準じます。

コールドシムVR(仮想現実)モード

肉体の感覚を手放してマトリックスからの感覚信号(シムセンス信号)のみを受け取ります。いわば電脳空間にフルダイブした状態で、データジャックなどの専用機器が必要です。
ARよりも処理速度が上がり、リアルな視聴覚を感じられますが、端末へのダメージが精神にフィードバックされる場合があります。

ホットシムVR(仮想現実)モード

VRの安全フィルターを解除し、生の感覚信号が全て流れ込んでいる状態です。触覚や味覚を含めた完全な五感を得られます。
処理速度が更に上昇し判定にもボーナスを得られますが、フィードバックダメージが身体ダメージになります。
運用例
戦闘中、Mr.ノートンはとある機器をハッキングしようとしていた。
早さが重要な局面なのだが、彼の強化反射神経はポンコツでARからハッキングを行うにはイニシアティブ不足が懸念された。
そこでノートンはインターフェースをVRモードに切り替え、マトリックスに直接ダイブする。
これなら愛用のサイバーデッキが十分なイニシアティブを提供してくれるし、必要ならばホットシムで更なるイニシアティブと判定ボーナスを得ることも可能だ。
…動かせない肉体はチームの仲間が守ってくれるだろう…多分。

マトリックスの視界

「見えているアイコン」「存在するが見えないアイコン」「ホスト」の3つで構成されます。
詳しくは以下の図式を参照してください。


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運用例
ランが成功裏に終わり、スティーブンはタクシーを拾って帰ることにした。
マトリックスで確認すると周囲100m内に空車は見つからず、マトリックス知覚を実行する。結果、1kmほど東にタクシーのアイコンを見つけ、メッセージを送って呼び寄せた。
…マトリックスに疎いスティーブンは気づいていないが、まともなタクシー会社なら公式のホストを持っているので、わざわざマトリックス知覚をしなくてもそちらにオーダーすればよかったのだ。
Mr.ノートンはマトリックスを確認し、前方にコムリンクのアイコンが表示されているのに気づいた。
どうやらチームの持つ試作品を狙ってチンピラが待ち伏せしているようだ。ノートンは表示されているアイコンに対してハッキングを試みることができる。
しかし彼は第三勢力…メガコーポの部隊が尾行していることには気づいていない。
メガのチームは全ての電子機器をサイレント状態にしているため、アイコンを認識するはマトリックス知覚を実行し、対抗テストで勝利しなくてはならない。

パーソナル・エリア・ネットワーク(PAN)

第六世界の代表的なハッキング対策としてあげられるのが「パーソナル・エリア・ネットワーク(PAN)」と呼ばれるプライベートネット方式です。
コムリンクなどの処理能力・セキュリティ能力の高い機器を「マスター」、他の電子機器を「スレーブ」に設定し、各種マトリックス動作に関する対抗テストをマスターの能力値で代行します。
パーソナル・エリア・ネットワーク(PAN)
コムリンクやサイバーデッキ等の個人用端末をマスターとします。保護できる数が限られますが、サイレントモードも使用可能です。
自分(仲間)のサイバーウェアや銃器アクセサリー、その他の電子機器をハッキングから守る重要なテクニックです。
ワイド・エリア・ネットワーク(WAN)
ホストをマスターとする業務規模のPANです。高い処理能力があり、スレイブの数に制限がありません。
またWANに加わっている機器は無線/有線に限らず全て直接接続されているものとして扱われます。
シャドウランナー(プレイヤー)にとっては主にシナリオ上の攻略対象となるでしょう。

PAN(WAN)の攻略

先述の通り、PANは電子機器を持つキャラクターなら必須の防御手段ですが、欠点もあります。
特定の状況下では防御を代行できない点、そしてPAN内の機器が一つでもハッキングされるとネットワーク全体に侵入されてしまう点です。


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運用例
Mr.ノートンはとある施設のホストに侵入し、そこにあるデータを手に入れなくてはならない。
ホストのレーティングは7。ファイアウォールの正面突破はリスクが高いので、セキュリティホールを探すこととした。
調査の結果、自販機など脆弱な端末はホストのWANに含まれていなかった(お手本のようなマトリックスセキュリティだ)
ただし、施設内のデータターミナルの一部は旧式で機器レーティングが低い。また業務用のコムリンクを社外に持ち出す迂闊な社員の存在も判明した。
ノートンはそのどちらかに直接接続し、WAN内部に侵入することとした。

マトリックス上の脅威

グリッド監視局(GOD)

マトリックスでの不正行動を監視する機関です。メタ的な視点ではハッキング処理の制限時間を司ります。
【アタック】か【スリーズ】に属する判定を行うたび、あるいは時間経過ごとにGODからの「監視指数」が増加し、一定値に達した時点でデッキへの攻撃と物理的な座標の特定が行われます。
デッキの再起動を行わない限り監視指数はリセットされないため、ハッキングした状態を維持できるのは長くて数時間程度となります。

アイス・プログラム(IC)

マトリックス・ホスト内に存在する警備プログラムで、メタ的な視点ではマトリックス上のモブエネミーです。
監視・通報だけでなく、デッキへの攻撃、ユーザーへのフィードバックダメージなど、様々な特性を持つプログラムが存在します。

ノイズ

その名の通り、マトリックスでの判定にペナルティを与えるノイズです。
通信量の多い地域、物理的な障害、距離に応じて発生しますが、有線による直接接続(または直接接続と同じ扱いとされるPAN/WANネットワーク内での判定)には影響しません。
ノイズを緩和するためのアイテムやプログラムもいくつか存在します。

データ爆弾

機密性の高いデータファイルに設置されていることの多いトラップです。
気づかずファイルにアクセスしたり解除に失敗すると起爆し、アクセスした端末に対してほぼ確実に破壊可能なダメージを発生させます。
マトリックス知覚でファイルを調べることで爆弾の有無を調べることが出来ます。

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